1. 「うちには無理」は本当か
FIDO2によるパスワードレス認証が、これからの認証の標準になる——そのことは理解しても、いざ自社での導入を考えると、さまざまな不安や課題が浮かんできます。「端末を紛失したら、ログインできなくなるのでは」「古いシステムが対応していない」「コストがかかりそう」「利用者が使いこなせるか」——。こうした課題を前に、「うちには、まだ無理だ」と足踏みしてしまう企業は少なくありません。
しかし、結論から言えば、これらの課題は、いずれもすでに解決策が確立されており、必ず乗り越えられるものです。FIDO2は、世界中の企業・サービスで導入が進んでおり、導入時に生じる課題も、その解決策も、十分に蓄積されています。本記事では、FIDO2導入でよくある6つの課題を挙げ、それぞれの現実的な解決策を、実務目線で解説します。「うちには無理」を、乗り越えていきましょう。
2. FIDO2導入でよくある6つの課題と解決策
課題① 端末(認証器)を紛失したらどうする?
最も多い不安が、これです。「スマホやセキュリティキーをなくしたら、ログインできなくなるのでは?」——。
解決策:認証手段を「1つだけ」にしないことです。あらかじめ複数の認証器を登録しておく(例:スマホと予備のセキュリティキー)ことで、1つをなくしても、もう1つでログインできます。加えて、紛失時に本人確認を経て再登録する手順をあらかじめ定めておけば、慌てることはありません。これは、鍵を1本だけでなくスペアを持っておくのと同じ、当たり前の備えです。なお、パスキーはクラウド経由で複数端末に同期できるため、機種変更時も引き継げます。
課題② 古いシステム(レガシー)がFIDO2に対応していない
長年使ってきた社内システムが、FIDO2に対応していない、というケースです。
解決策:すべてを一度にFIDO2化する必要はありません。まずFIDO2に対応しているシステム(多くのSaaSやWindowsなど)から始め、非対応の古いシステムは、認証基盤(ID管理システム)を介して連携させたり、システムの更新・置換のタイミングで対応させたりします。「対応しているところから、段階的に」進めるのが現実解です。むしろ、この機会に古いシステムの棚卸しができる利点もあります。
課題③ コストがかかりそう
導入費用や、セキュリティキーの購入費が気になる、という課題です。
解決策:コストは「守るもの」と比べて判断します。パスワードが破られてランサムウェアに感染すれば、被害額は数千万円から数億円に及ぶこともあります。それと比べれば、パスワードレス化の投資は十分に見合います。また、スマホの生体認証やWindows Hello、パスキーを使えば、専用のセキュリティキーを全員に配らずに始めることもでき、初期コストは抑えられます。さらに、パスワードのリセット対応(情報システム部門の大きな負担)が減るという、運用コストの削減効果もあります。
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課題④ 利用者が使いこなせるか不安
ITに不慣れな社員が多く、新しい認証に戸惑うのでは、という課題です。
解決策:実は、FIDO2/パスキーはパスワードより簡単です。覚えるパスワードがなく、指紋や顔をかざす、ボタンを押すだけ。多くの人が、スマホの指紋・顔認証で、すでに日常的に使っている操作です。むしろ「複雑なパスワードを覚え、定期的に変える」ことから解放されて、利用者に喜ばれるケースが多いのです。導入時に簡単な説明を行えば、ITに不慣れな方でも問題なく使えます。
課題⑤ 何から始めればいいか分からない
そもそも、導入の進め方が分からない、という課題です。
解決策:これは、段階的なロードマップに沿って進めれば解決します。①現状把握 → ②対象の選定 → ③スモールスタート → ④全社展開、という順で、小さく始めて広げていきます。詳しくはパスワードレス認証 導入ロードマップで解説しています。最初から完璧を目指さず、リスクの高い入口から一つずつ、が鉄則です。
課題⑥ 社内の理解・協力が得られない
経営層や他部署の理解が得られず、話が進まない、という課題です。
解決策:「なぜやるのか」を、数字と事実で伝えます。パスワードが原因の被害事例、そしてNISTなど世界のガイドラインがパスワードレスを求めている事実は、経営層を動かす強い材料です。「これはコストではなく、事業を守る投資であり、いずれ求められる標準への対応だ」と位置づけることが、社内の協力を得る鍵になります。
3. 課題を乗り越えた先にあるもの
ここまで見てきたように、FIDO2導入の課題は、いずれも解決策が確立されています。そして、これらの課題を乗り越えた先に待っているのは、「パスワードのいらない、安全で快適な世界」です。
パスワードレスを実現した企業では、フィッシングでパスワードを盗まれる心配がなくなり、使い回しによる芋づる式の被害もなくなります。利用者はパスワードを覚える負担から解放され、情報システム部門はパスワードリセット対応の手間から解放されます。セキュリティと利便性が、高い次元で両立するのです。そして何より、世界のガイドラインが求める、これからの標準的な認証を、自社が備えているという安心があります。
課題があるからと足踏みしているうちにも、パスワードを狙う攻撃は続いています。課題は、一つずつ、着実に乗り越えられます。大切なのは、「うちには無理」と諦めず、専門家の力も借りながら、第一歩を踏み出すことです。
4. まとめ
FIDO2によるパスワードレス認証の導入には、「端末紛失」「レガシー対応」「コスト」「利用者の習熟」「進め方」「社内理解」といった課題がつきものです。しかし、本記事で見たように、これらはいずれもすでに解決策が確立されており、必ず乗り越えられます。複数の認証器を登録する、対応システムから段階的に進める、被害額と比べてコストを判断する——一つずつ、現実的に対処できます。
課題を乗り越えた先には、パスワードのいらない、安全で快適な世界が待っています。これは、世界のガイドラインが求める、これからの認証の標準でもあります。「うちには無理かもしれない」と感じているなら、その課題こそ、ぜひ一度ご相談ください。数多くの導入で蓄積された知見をもとに、貴社の課題に合った解決策をご提案します。課題を乗り越え、パスワードレスの第一歩を、一緒に踏み出しましょう。