ID・アクセス管理

Excelでパスワード管理しても大丈夫?危険な理由と、パスワードレスという根本解決

2026年3月23日 読了約9分 Net Peace編集部 Excel, パスワード管理, 情報漏えい, パスワードレス

1. 結論:Excelでのパスワード管理は推奨できない

「増え続けるID・パスワードを、Excelファイルに一覧でまとめて管理している」——多くの職場で見られる光景です。手軽で、一覧できて便利。では、このExcelでのパスワード管理は、大丈夫なのでしょうか。結論からお答えします。

Excelでのパスワード管理は、推奨できません。手軽さの裏で、情報漏えいの大きなリスクを抱えているからです。ID・パスワードを1つのファイルにまとめるということは、「そのファイル1つが漏れれば、すべての認証情報が一度に流出する」ということを意味します。これは、非常に危険な状態です。ではどうすればよいのか——当面の代替策と、根本的な解決策を、順に見ていきましょう。

2. なぜExcel管理は危険なのか

Excelでのパスワード管理が危険な理由は、いくつもあります。

  • 1ファイルの漏えいで全滅:すべてのID・パスワードが1つのファイルに集まっているため、そのファイルが漏れれば、全部の認証情報が一度に流出する。被害が甚大。
  • ファイルのパスワード保護は限定的:Excelファイル自体にパスワードをかけても、保護は万全ではない。パスワードが単純だったり、解除ツールがあったりする。
  • コピー・共有・持ち出しが容易:ファイルは簡単にコピーでき、メールで送ったり、USBで持ち出したりできる。どこに広がっているか把握できなくなる。
  • 誰がアクセスしたか分からない:ファイルサーバー上のExcelを、誰がいつ見たか、追跡が難しい。
  • 平文で見えてしまう:ファイルを開けば、パスワードがそのまま平文で見える。盗み見も容易。

つまり、Excelでのパスワード管理は、「最も重要な認証情報を、最も漏れやすく、最も被害が広がりやすい形で保管している」状態なのです。手軽さと引き換えに、大きなリスクを抱えています。もし退職者がこのファイルをコピーして持ち出していたら、あるいは、このファイルが置かれたPCがマルウェアに感染したら——想像するだけで、その危険性が分かるはずです。

「パスワード一覧ファイル」は、宝の地図
攻撃者にとって、ID・パスワードが一覧になったファイルは、まさに「宝の地図」です。1つ手に入れれば、そこに書かれたすべてのシステムに侵入できるからです。マルウェアの中には、こうしたパスワードが書かれたファイルを探し出して盗むものもあります。Excelでのパスワード管理は、この「宝の地図」を、無防備に置いているようなものなのです。

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3. 当面の代替策——パスワードマネージャー

「Excelが危険なのは分かった。では、パスワードをどう管理すればいいのか」——当面の現実的な代替策が、パスワードマネージャー(パスワード管理ツール)です。

パスワードマネージャーは、ID・パスワードを安全に保管する専用のツールです。Excelとの主な違いは、次のとおりです。

  • 強力に暗号化して保管:認証情報を、強力な暗号化で保護して保管する。Excelのような平文ではない。
  • 自動入力で盗み見を防ぐ:ログイン時に自動でパスワードを入力するため、パスワードを目にする機会が減る。
  • 強いパスワードを自動生成:サービスごとに、強くて異なるパスワードを自動生成できる。使い回しを防げる。
  • アクセス管理:誰がアクセスできるかを管理できる(企業向けの場合)。

Excelでのパスワード管理を続けているなら、まずはパスワードマネージャーへの移行が、大きな改善になります。ただし、パスワードマネージャーも「パスワードを安全に保管する」ツールであって、パスワードそのものがなくなるわけではありません。フィッシングでパスワードを盗まれるリスクや、マスターパスワードが破られるリスクは残ります。パスワードマネージャーは「より安全なパスワード管理」ではありますが、パスワードの悩みを根本から解消するものではないのです。では、根本的な解決とは何でしょうか。

4. 根本解決——そもそもパスワードをなくす

ここまでの話を振り返ると、根本的な問題が見えてきます。Excelが危険なのも、パスワードマネージャーが必要なのも、すべて「パスワードという、覚えて・保管して・入力する秘密が、たくさんあること」から生じています。ならば、その根っこ——パスワードそのもの——をなくせば、これらの悩みは根本から消えます。

これが、パスワードレス認証という根本解決です。パスワードレス認証(FIDO2/パスキー)では、パスワードの代わりに、端末に安全に保管された鍵と、生体認証やPINで本人確認を行います。覚えるパスワードも、保管するパスワードも、入力するパスワードも、存在しません。だから——

  • 保管する一覧が不要:そもそも覚える・保管するパスワードがないため、Excelもパスワードマネージャーも要らない。「宝の地図」自体が存在しなくなる。
  • 漏れる合言葉がない:ネットワークを流れるのは暗号的な署名だけ。盗んで悪用できるパスワードがない。
  • フィッシングに強い:偽サイトでは認証が成立しないため、パスワードを騙し取る攻撃が無効になる。

世界のセキュリティガイドラインも、この方向へ明確に向かっています。米国NISTの最新ガイドラインは、フィッシングにも強いパスワードレス認証を明確に位置づけました。「Excelでパスワード管理しても大丈夫か」という問いを突き詰めると、たどり着く答えは、「そもそもパスワードを管理しなくてよいように、パスワードをなくす」ことなのです。パスワードの管理方法に悩むのではなく、パスワードそのものから卒業する——それが、時代が示す最も確実な解決策です。

5. まとめ

「Excelでパスワード管理しても大丈夫か」という質問への答えは、「推奨できない」です。ID・パスワードを1つのファイルにまとめることは、そのファイルの漏えいで全認証情報が流出する、極めて危険な状態だからです。もし今、Excelでパスワードを管理しているなら、それは早急に見直すべきです。

当面の代替策としては、パスワードマネージャーへの移行が現実的です。しかし、それは「より安全なパスワード管理」であって、パスワードの悩みを根本から解消するものではありません。根本的な解決は、そもそもパスワードをなくす、パスワードレス認証への移行です。パスワードがなければ、Excelもパスワードマネージャーも不要になり、漏えいもフィッシングも根本から問題でなくなります。世界のガイドラインが示す方向も、パスワードレスです。「パスワードをどう管理するか」に悩むのをやめ、「パスワードをなくす」ことを検討してみることを、強くおすすめします。

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Net Peace編集部

サイバーセキュリティ専門チーム

FIDO2・ゼロトラスト・ID管理・eKYCを専門とするセキュリティエンジニアチームです。NIST・CISA・FIDO Alliance等の公表情報と実務経験に基づいて記事を作成しています。

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