ID管理・IAM

RBACとは?ABACとの違いと、権限設計で失敗しないための実践ポイント

2026年8月2日 読了約11分 Net Peace セキュリティチーム RBAC, ABAC, 権限設計, アクセス制御

アクセス権限をどのように設計するかは、セキュリティと業務効率の両方に直結する重要な意思決定です。代表的なモデルであるRBAC(ロールベースアクセス制御)ABAC(属性ベースアクセス制御)は、それぞれ異なる考え方に基づいており、企業の規模や業務の複雑さによって適した選択が変わります。本記事では、両者の違いと、権限設計で失敗しないための実践ポイントを解説します。

1. RBACとは何か

RBAC(Role-Based Access Control)は、「ロール(役割)」という単位に権限をまとめ、ユーザーにロールを割り当てることでアクセス権を管理する方式です。例えば「経理担当者」というロールに「会計システムの閲覧・入力権限」を紐づけておけば、新しく経理部に配属された社員には、そのロールを割り当てるだけで必要な権限一式が付与されます。

RBACの最大の利点は、個々のユーザーに対して1件ずつ権限を設定する必要がなく、組織構造・職務内容に沿った直感的な権限管理ができる点です。多くの企業のIAM運用の基礎になっています。

2. ABACとは何か

ABAC(Attribute-Based Access Control)は、ユーザーの属性(部署、役職、雇用形態)、リソースの属性(機密レベル、作成日)、環境の属性(アクセス元の場所、時間帯、デバイスの状態)など、複数の「属性」の組み合わせによって、動的にアクセス可否を判断する方式です。

例えば「経理部の社員が」「社内ネットワークから」「営業時間内に」アクセスする場合のみ許可する、といったより柔軟で状況依存的なルールを定義できます。ゼロトラストアーキテクチャの文脈では、このABACの考え方が中心的な役割を果たします。

3. RBACとABACの比較

RBACとABACの比較
観点 RBAC ABAC
権限の決定方法 事前定義されたロールへの割り当て 複数属性の組み合わせによる動的判定
設計のわかりやすさ 直感的で理解しやすい ルールが複雑になりやすく、設計・監査に専門性が必要
柔軟性 状況に応じた動的な制御は苦手 時間帯・場所・デバイス状態など、状況に応じた制御が可能
スケーラビリティ 例外が増えるとロール数が肥大化しやすい 属性の組み合わせで例外にも対応しやすい
導入・運用の負荷 比較的低い ポリシーエンジンの構築・運用に高度な専門知識が必要

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4. RBAC設計で陥りがちな失敗:ロール爆発

RBACの運用でよく発生する問題が「ロール爆発(Role Explosion)」です。個別の例外対応のたびに新しいロールを作り続けると、組織のロール数が数百・数千にまで膨れ上がり、「どのロールが何をできるのか」を誰も正確に把握できなくなる状態に陥ります。

ロール爆発が起きる典型的なパターン

  • 「〇〇部の△△さん専用」といった、実質的に個人に紐づいたロールが乱立する
  • 一時的なプロジェクトのために作成したロールが、プロジェクト終了後も削除されずに残り続ける
  • 既存ロールを微調整するのではなく、似て非なる新しいロールを都度作成してしまう

ロール爆発を防ぐには

例外的なニーズに対しては、新しいロールを作るのではなく、一時的な追加権限(JITアクセス)で対応する運用にすることで、標準ロールの数を適正に保てます。また、定期的にロールの利用状況を棚卸しし、使われていない・重複しているロールを整理する運用も欠かせません。

5. ハイブリッドモデルという選択肢

実務上、多くの企業はRBACかABACかの二者択一ではなく、両者を組み合わせたハイブリッドモデルを採用しています。基本的な権限セットはRBACのロールで管理しつつ、特に機密性の高いリソースへのアクセスや、リモートワーク環境からのアクセスなど、状況に応じた追加制御が必要な部分にはABAC的な属性ベースのルールを重ねる、という設計です。

すべてをABACで設計しようとすると運用の複雑さが増しすぎるため、「基本はRBACでシンプルに、リスクの高い部分だけABACで補強する」という段階的なアプローチが現実的です。

6. 権限設計の実践ステップ

権限設計の実践ステップ
ステップ 内容
1. 業務・組織構造の棚卸し 部署・職種ごとに必要な権限を整理する
2. 標準ロールの設計 棚卸し結果をもとに、基本的なロールセットを定義する
3. 例外ケースの洗い出し 標準ロールでは対応できない例外を特定し、JITアクセスやABACルールでの対応を検討する
4. 運用開始とモニタリング 実際に運用しながら、ロールの利用状況・不要なロールの発生をモニタリングする
5. 定期的な見直し 四半期〜半年ごとにロールの棚卸しを実施し、ロール爆発を未然に防ぐ

よくある質問

Q1: 中小企業はRBACとABAC、どちらを採用すべきですか?

組織規模が小さく、業務プロセスが比較的シンプルな段階では、まずRBACでの基本的な権限管理から始めることを推奨します。ABACは運用の専門性が求められるため、リモートワークの拡大や取引先とのアクセス連携など、状況に応じた制御ニーズが具体的に生じた段階で部分的に導入を検討するのが現実的です。

Q2: ロール爆発はどうやって発見できますか?

ロールの数が組織の部署数・職種数に対して不自然に多い、特定の1人しか割り当てられていないロールが多数存在する、といった兆候から発見できます。定期的なロール棚卸しの中で、こうした異常値をチェックする運用を組み込むことが有効です。

Q3: RBACとゼロトラストは両立しますか?

両立します。ゼロトラストは「常に検証する」という考え方であり、RBACで定義された基本権限に加えて、アクセス時点でのデバイス状態や場所などをABAC的に検証する仕組みを組み合わせることで、ゼロトラストの実現に近づけます。

7. まとめ

RBACとABACについて解説した内容を振り返ります。

  • RBACはロール単位での権限管理で、直感的でわかりやすいが、状況依存的な制御は苦手
  • ABACは属性の組み合わせで動的に権限を判定でき、柔軟だが設計・運用の専門性が求められる
  • RBAC設計で陥りやすい「ロール爆発」は、例外をJITアクセスで吸収し、定期棚卸しで防ぐ
  • 多くの企業では、基本はRBAC・リスクの高い部分はABACで補強するハイブリッドモデルが現実的
  • 権限設計は、業務棚卸し→標準ロール設計→例外対応→定期見直しのサイクルで継続的に改善する

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