1. なぜVPN認証が狙われるのか
テレワークやリモートアクセスの普及とともに、VPN(仮想プライベートネットワーク)は、多くの企業にとって欠かせない仕組みになりました。しかし今、そのVPNこそが、攻撃者に最も狙われる入口の一つになっています。
理由は明快です。VPNは「社外から社内ネットワークへ入るための扉」であり、その扉を突破すれば、攻撃者は社内に一気に侵入できるからです。そして多くのVPNは、いまだにID+パスワードだけで認証しています。パスワードが、フィッシングや、他社からの漏洩情報の使い回し(クレデンシャルスタッフィング)で盗まれれば、攻撃者はやすやすとVPNを通り抜けてしまいます。実際、国内外で報告されているランサムウェア被害の多くで、VPNが侵入経路になっています。「VPNがあるから安心」ではなく、「VPNの認証がパスワードだけなら危険」——これが現実です。本記事では、そのVPN認証を「見直すべきタイミング」を、具体的なサインとして示します。
2. VPN認証を見直すべき5つのサイン
次のうち一つでも当てはまるなら、あなたの会社のVPN認証は、見直すべきタイミングに来ています。
| サイン | なぜ危険か |
|---|---|
| ① VPNがID+パスワードだけ | パスワードが盗まれれば、それだけで社内に侵入される。最も危険な状態 |
| ② 退職者のVPNアカウントが残っている | 止め忘れたアカウントは、監視されない侵入口になる |
| ③ 誰がいつVPN接続したか把握できない | 不正アクセスに気づけず、被害が拡大する |
| ④ VPN機器のサポート・更新が滞っている | VPN機器の脆弱性は攻撃者の格好の標的。認証以前の問題 |
| ⑤ 一度VPNに入れば社内が「素通り」 | 入口さえ破れば全体が危険。ゼロトラストの考え方が必要 |
特に①「VPNがID+パスワードだけ」は、最も多く、そして最も危険なサインです。「これまで問題なかったから、まだ大丈夫」——その油断こそが危険です。攻撃は、ある日突然、パスワードが破られた瞬間に始まります。
自社のVPN認証、大丈夫ですか?
パスワードだけのVPNは、狙われる入口です。多要素認証・ゼロトラスト・パスワードレスへの見直しを、Net Peaceが支援します。
3. 見直しの進め方——多要素認証からゼロトラストへ
VPN認証を見直すべきタイミングに来ていると分かったら、次のステップで進めます。
- ステップ1:VPNに多要素認証を追加する(最優先)
まず、VPNの認証にパスワード以外の要素を加えます。これだけで、パスワードが盗まれても、それ単独では侵入されなくなります。最も効果が高く、すぐ取り組むべき対策です。 - ステップ2:アカウントを棚卸しし、退職者分を止める
使われていないアカウント、退職者のアカウントを洗い出し、確実に無効化します。ID管理システムと連携させれば、退職に連動した自動の無効化ができます。 - ステップ3:アクセスを記録・監視する
「誰がいつVPN接続したか」を記録し、不審なアクセスに気づける状態にします。 - ステップ4:ゼロトラストの考え方を取り入れる
「一度VPNに入れば社内は素通り」をやめ、社内でも、アクセスのたびに本人と権限を確認する(何も信頼しない=ゼロトラスト)方向へ進めます。
すべてを一度にやる必要はありません。しかし、ステップ1の「VPNへの多要素認証の追加」だけは、今すぐ着手すべきです。それが、VPN認証の見直しの、最も重要な第一歩です。
4. VPN認証の最終形——パスワードレス
VPN認証の見直しを進めるうえで、最終的に目指すべきゴールは「パスワードレス」です。
多要素認証は、VPN認証を強化する重要な一手です。しかし、パスワードを「残したまま」要素を足すやり方には、限界もあります。例えば、SMSやアプリの確認コードを使う多要素認証は、巧妙なフィッシングによって、コードごと盗まれてしまう事例が報告されています。パスワードという「盗めるもの」が認証に残っている限り、攻撃者はそれを狙い続けるのです。
だからこそ、VPN認証が最終的に目指すべきは、パスワードそのものをなくすパスワードレス認証(FIDO2/パスキー)です。FIDO2は、フィッシングに極めて強く、パスワードや確認コードのように「盗んで使う」ことができない仕組みです。世界のセキュリティガイドラインも、認証の最終的な到達点として、このパスワードレスを明確に示しています。VPN認証の見直しは、多要素認証から始めつつ、その先にあるパスワードレスを見据えて進めることが、これからの正解です。「入口を、盗めるものでは守らない」——それが、VPN認証の最終形です。
5. まとめ
VPNは、リモートアクセスを支える便利な仕組みであると同時に、攻撃者に最も狙われる入口の一つです。「VPNがパスワードだけ」「退職者アカウントが残っている」「接続を把握できていない」——こうしたサインが一つでもあれば、VPN認証を見直すべきタイミングです。「まだ大丈夫」という油断が、最も危険です。
見直しは、まずVPNへの多要素認証の追加から。そして、アカウントの棚卸し、アクセスの記録、ゼロトラストの導入へと進めます。最終的に目指すゴールは、パスワードそのものをなくすパスワードレス認証です。世界のガイドラインが示すこの方向を見据え、VPN認証の見直しを進めましょう。「自社のVPNは大丈夫か不安」「何から手をつければいいか分からない」——そんなときは、まず自社のVPN認証の現状を確認し、専門家に相談することをおすすめします。