1. Microsoft Entra IDとは
Microsoft Entra ID(エントラ・アイディー)とは、Microsoftが提供する、クラウド型のID・アクセス管理サービスです。以前は「Azure Active Directory(Azure AD)」という名称でしたが、2023年にMicrosoft Entra IDへと名称が変更されました(機能や役割は引き継がれています)。
Entra IDは、Microsoft 365(Teams、Outlook、SharePointなど)や、数千種類のSaaS、社内アプリの認証を一元的に担う、企業のID基盤です。従業員は、Entra IDのアカウントでログインすれば、連携する多数のサービスを利用できます。多くの企業がMicrosoft 365を導入している今、Entra IDは、事実上、その企業のID・認証の中核を担う存在になっています。ID・アクセス管理(IAM)そのものの基礎はIAMとはもご覧ください。
2. オンプレADとの違い
「Active Directory(AD)」という名前から、従来社内で使われてきた「オンプレミスのActive Directory」と混同されがちですが、両者は異なるものです。
| 観点 | オンプレAD(Active Directory) | Entra ID(旧Azure AD) |
|---|---|---|
| 設置場所 | 自社内のサーバー | クラウド(Microsoftが運用) |
| 主な対象 | 社内のPC・サーバー・ファイル共有 | クラウド・SaaS・Microsoft 365 |
| 接続方式 | 社内ネットワーク前提 | インターネット経由でどこからでも |
オンプレADが「社内の資源」を管理するのに対し、Entra IDは「クラウド・SaaS」の認証を担います。多くの企業では、この2つを連携させて併用しています(ハイブリッドID)。オンプレADの位置づけはActive Directoryだけでは不十分な理由、両者の連携はハイブリッドID管理とはで解説しています。
3. Entra IDの主な機能
- シングルサインオン(SSO):1度のログインで、Microsoft 365や連携する多数のSaaSを利用できます。
- 多要素認証(MFA):パスワードに加えた認証で、アカウントを保護します。
- 条件付きアクセス:「誰が」「どこから」「どの端末で」アクセスするかに応じて、アクセスの可否や追加認証を動的に制御します(ゼロトラストの実践)。
- ユーザー・グループ管理:アカウントの発行・削除、権限のグループ管理を行います。
- パスワードレス認証:Windows Hello、FIDO2セキュリティキー、パスキーなどによる、パスワードのない認証に対応します。
これらにより、Entra IDは、企業のID・認証を一元的に管理・保護します。特に「条件付きアクセス」は、状況に応じて認証の強度を変える、ゼロトラストの考え方を実装した重要な機能です。
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4. Entra IDでの認証強化の考え方
Entra IDは、企業のID・認証の中核です。それは裏を返せば、Entra IDが狙われ、突破されれば、Microsoft 365も連携する全SaaSも危険にさらされるということです。実際、攻撃者はこの重要なID基盤を狙い、フィッシングやパスワード攻撃を仕掛けてきます。だからこそ、Entra IDの認証強化は、企業セキュリティの要となります。
認証強化の基本は、まず多要素認証(MFA)を有効にすることです。パスワードだけの状態から抜け出すだけで、多くの攻撃を防げます。さらに条件付きアクセスで、リスクの高いアクセスには追加認証を求めるなど、状況に応じた制御を加えます。しかし、パスワードを残したままのMFAには、フィッシングで突破される限界があります(MFAだけで十分?)。Entra IDの認証を本当に強くするには、その先が必要です。
5. Entra IDが目指す先——パスワードレス
Entra IDの認証強化の到達点は、パスワードそのものをなくす「パスワードレス認証」です。そして重要なのは、Microsoft自身が、パスワードレスを強く推進していることです。
Entra IDは、Windows Hello for Business、FIDO2セキュリティキー、パスキーといった、フィッシングに強いパスワードレス認証に標準で対応しています。Microsoftは、パスワードを「最も弱い認証」と位置づけ、パスワードレスへの移行を公式に推奨しています。パスワードレスなら、Entra IDという重要なID基盤の入口から、盗めるパスワードそのものがなくなり、フィッシングによるなりすましを原理的に防げます。Microsoft 365も全SaaSも、その強固な入口の下で守られます。
米国NISTをはじめ世界のセキュリティガイドラインが最終的に求める認証も、このフィッシングに強いパスワードレスです。Entra IDを使っているなら、まずMFAと条件付きアクセスで守りを固め、その先の到達点として、パスワードレスを目指す——これが、Microsoft環境のセキュリティの正解です。Entra IDは、パスワードレスへ進むための機能を、すでに備えているのです。
6. まとめ
Microsoft Entra ID(旧Azure AD)とは、Microsoftが提供するクラウド型のID・アクセス管理サービスで、Microsoft 365や多数のSaaSの認証を一元的に担う、企業のID基盤です。SSO、多要素認証、条件付きアクセス、パスワードレス認証といった機能で、ID・認証を管理・保護します。オンプレADとは異なり、クラウド・SaaSの認証を担い、多くの企業では両者を連携させて併用します。
Entra IDは企業のID・認証の中核であるがゆえに狙われやすく、その認証強化は要となります。MFA・条件付きアクセスで守りを固め、最終的な到達点として、Microsoft自身も推奨するパスワードレス認証(FIDO2/パスキー)を目指すことが正解です。世界のガイドラインが最終的に求めるのも、このパスワードレスです。Entra IDを活用しているなら、まず認証の現状を確認し、パスワードレスへの道筋を検討しましょう。進め方でお困りなら、専門家にご相談ください。