ID・アクセス管理

ハイブリッドID管理とは?オンプレADとクラウドをつなぐ考え方

2026年3月6日 読了約10分 Net Peace編集部 ハイブリッドID, Active Directory, Entra ID, パスワードレス

1. ハイブリッドID管理とは

ハイブリッドID管理とは、社内のオンプレミスAD(Active Directory)と、クラウドのMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)を連携させ、両方の環境のIDを一元的に管理する仕組みです。「ハイブリッド」とは、オンプレとクラウドの「両方」を組み合わせる、という意味です。

具体的には、オンプレADのアカウント情報を、クラウドのEntra IDへ同期させます。これにより、従業員は一つのIDとパスワードで、社内システム(オンプレAD)とクラウド・SaaS(Entra ID)の両方にアクセスできるようになります。オンプレとクラウドという2つの世界を、1つのIDでつなぐ——それがハイブリッドID管理です。オンプレADとEntra IDそれぞれの役割は、Entra IDとはもあわせてご覧ください。

2. なぜ多くの企業がハイブリッドになるのか

現在、多くの企業のID環境が、このハイブリッドな状態にあります。それは、「完全なクラウド移行」も「オンプレのまま」も、どちらも現実的でないからです。

一方で、テレワークやSaaS活用のために、クラウドのEntra IDは不可欠になりました。しかし他方で、長年使ってきたオンプレADに依存する社内システムやファイル共有が、簡単にはなくせないのが現実です。「クラウドは必要、でもオンプレも捨てられない」——この現実的な要請に応える答えが、両者を連携させるハイブリッドIDなのです。つまり、ハイブリッドは、多くの企業にとって「通らざるを得ない道」であり、またAD移行を段階的に進めるうえでの現実解でもあります。

3. ハイブリッドIDの利点

  • 1つのIDで両環境にアクセス:従業員は、社内システムもクラウドも、同じIDで使え、利便性が高まります。
  • 既存資産を活かせる:オンプレADへの投資や、依存する社内システムを、無駄にせず活用できます。
  • 段階的な移行が可能:一気にクラウドへ移さず、業務を止めずに、少しずつ移行を進められます。
  • 管理の一元化:両環境のアカウントを連携させ、入退社などの管理を一貫して行えます。

このように、ハイブリッドIDは、クラウドの利便性と、オンプレの資産活用を両立させる、実践的な仕組みです。ただし、便利さの裏には、注意すべきリスクもあります。

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4. 見落とせないリスク——広がる攻撃面

ハイブリッドIDには、見落としてはならないリスクがあります。それは、オンプレとクラウドという2つの環境を同時に守らなければならず、攻撃を受ける面(アタックサーフェス)が広がることです。

オンプレADとクラウドEntra IDが連携しているということは、裏を返せば、どちらか一方が破られると、もう一方にも影響が及びうるということです。たとえば、オンプレADのアカウントが乗っ取られれば、同期を通じてクラウドのリソースにもアクセスされかねません。逆に、クラウド側のフィッシング被害が、オンプレに波及することもあります。両環境をつなぐ「同期の設定」に不備があれば、そこが攻撃の起点にもなります。ハイブリッドIDは便利ですが、2つの世界の「境界」と「つなぎ目」を、両方きちんと守る必要があるのです。だからこそ、ハイブリッド環境では、認証の強化がいっそう重要になります。

5. ハイブリッド環境の認証——パスワードレスへ

オンプレとクラウドの両方をつなぐハイブリッド環境では、その要となる認証を、いかに強くするかが決定的に重要です。そして、その到達点は、フィッシングに強いパスワードレス認証(FIDO2/パスキー)です。

考えてみてください。ハイブリッドIDでは、1つのIDが、オンプレとクラウドの両方への「鍵」になります。その鍵がパスワードなら、フィッシングで1つ盗まれるだけで、両環境が同時に危険にさらされます。逆に、その鍵を、盗みようのないパスワードレスにすれば、1つの強い認証で、オンプレとクラウドの両方を、同時に守れるのです。Microsoftも、ハイブリッド環境を含め、Windows Hello for BusinessやFIDO2、パスキーによるパスワードレス認証を推奨しています。これらは、オンプレ・クラウドを問わず、フィッシングに強い認証を提供します。

米国NISTをはじめ世界のセキュリティガイドラインが最終的に求める認証も、このパスワードレスです。ハイブリッドIDは、多くの企業にとって現実的な選択であり、また段階的なクラウド移行の通り道でもあります。だからこそ、その要となる認証は、パスワードだけの状態から、盗みようのないパスワードレスへ——それが、2つの世界をつなぎながら、両方を安全に守る道なのです。ハイブリッドを、認証をパスワードレスへ進める好機と捉えましょう。

6. まとめ

ハイブリッドID管理とは、社内のオンプレADと、クラウドのEntra IDを連携させ、両環境のIDを一元的に管理する仕組みです。「クラウドは必要、でもオンプレも捨てられない」という現実に応える答えであり、多くの企業が通る道です。1つのIDで両環境にアクセスでき、既存資産を活かしつつ段階的に移行できる利点があります。

一方で、2つの環境を同時に守る必要があり、攻撃面が広がるリスクもあります。だからこそ、その要となる認証の強化が決定的に重要です。1つの鍵がオンプレとクラウドの両方を開けるハイブリッドだからこそ、その鍵は、盗みようのないパスワードレス認証(FIDO2/パスキー)にすべきです。Microsoftも世界のガイドラインも、最終的にこのパスワードレスを求めています。ハイブリッドIDを、認証をパスワードレスへ進める好機としましょう。運用でお困りなら、専門家にご相談ください。

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Net Peace編集部

サイバーセキュリティ専門チーム

FIDO2・ゼロトラスト・ID管理・eKYCを専門とするセキュリティエンジニアチームです。実際の導入支援の経験と、NIST・Microsoft・IPA等の公表情報に基づいて記事を作成しています。

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