SCS評価制度

なぜSCS評価制度は必要か——制度発足の背景とサプライチェーン攻撃の実態【2026年版】

2026年1月19日 読了約15分 Net Peace セキュリティチーム SCS評価制度, サプライチェーン, IPA, 経済産業省

1. SCS評価制度とは何か

SCS評価制度(正式名称:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)は、経済産業省(METI)が主導し、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運用する、企業のサプライチェーンにおけるサイバーセキュリティ対策の水準を客観的に評価・認定する制度です。

本記事では、「なぜこの制度が必要とされるのか」という背景・経緯を中心に解説します。制度の全体像・評価レベル(★3/★4)・要求事項・対象企業・取得手順といった基本を体系的に知りたい方は、SCS評価制度とは?2026年版 完全ガイドを先にご覧ください。

2026年3月27日、経済産業省が制度構築方針を公式発表(METI発表URL)し、2026年度末ごろの制度開始を目指して整備が進められています。IPA公式ページ(https://www.ipa.go.jp/security/scs/index.html)では随時最新情報が更新されています。

日本では従来、企業単体のセキュリティ対策は各社の自主性に委ねられてきました。しかし近年、大手企業を狙ったサイバー攻撃が、そのサプライチェーン(取引先・委託先・部品メーカーなど)を踏み台にして行われるケースが急増しています。SCS評価制度は、このような「サプライチェーンの弱点」を補強するために生まれた制度です。

SCS評価制度の基本情報

  • 正式名称:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)
  • 主導:経済産業省(METI)
  • 運用:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
  • 制度構築方針公表:2026年3月27日
  • 制度開始予定:2026年度末ごろ(METI発表)
  • 参加形態:現時点では任意参加(義務化は未確定)

SCS評価制度は、企業のセキュリティ対策を段階的に評価する「星(★)」のレベル制を採用しています。現在公表されているのは★3(基本)と★4(標準)の2段階です。これらはそれぞれ異なる要求事項・評価基準・有効期限を持ち、企業の規模や取引先の要求に応じて取得目標を選ぶことができます。

なお、本記事の内容はIPA公式ドキュメントおよび経済産業省の発表を基に作成していますが、制度の詳細は今後変更される可能性があります。最新情報は必ずIPA公式ページをご参照ください。

2. 制度発足の背景:サプライチェーン攻撃の脅威

SCS評価制度が生まれた最大の背景は、サプライチェーンを標的にしたサイバー攻撃の急増です。2020年に発覚したSolarWinds社のソフトウェアアップデートを悪用した攻撃事案は、IT管理ソフトウェアを経由して米国政府機関や大手企業18,000社以上に影響を及ぼし、サプライチェーン攻撃の危険性を世界に知らしめました。

国内でも、製造業・自動車部品メーカー・医療機関などでランサムウェア被害が相次いでいます。多くのケースで、攻撃者は「セキュリティ対策が手薄な取引先」から侵入し、本来の標的企業のシステムに到達するという手口が確認されています。JPCERT/CC(https://www.jpcert.or.jp/)も、サプライチェーン攻撃に関する注意喚起を継続的に発表しています。

サプライチェーン攻撃が増加する3つの理由

  • 大企業の防衛強化の裏をかく:大企業は高度なセキュリティ対策を導入しているため、攻撃者はより防衛の弱い中小サプライヤーを経由して侵入する手口を選ぶ。
  • デジタル化による接続の拡大:EDI(電子データ交換)やクラウドサービスの普及により、取引先同士のシステム連携が密になり、一社の侵害が連鎖する可能性が高まっている。
  • ソフトウェアサプライチェーンの複雑化:オープンソースソフトウェアやサードパーティコンポーネントの利用拡大により、ソフトウェア自体が攻撃経路となるリスクが増大している。

政府はこうした脅威に対応するため、2022年の経済安全保障推進法の成立、2023年のサイバーセキュリティ戦略の改定などを通じて、サプライチェーン全体のセキュリティ強化を国家的課題として位置づけてきました。SCS評価制度は、こうした政策の流れの中で、企業が自社のセキュリティ対策水準を客観的に示せる仕組みとして設計されました。

国内サプライチェーン攻撃の主な被害パターン

  • 委託先のVPN機器の脆弱性を悪用した大手メーカーへの侵入
  • 取引先企業のメールアカウントを乗っ取ったビジネスメール詐欺(BEC)
  • 部品メーカーへのランサムウェア攻撃による自動車製造ライン停止
  • 医療機器メーカーのシステム経由での病院へのランサムウェア侵入
  • システム開発委託先経由での官公庁システムへの不正アクセス

3. 評価レベルの構造(★3/★4)

SCS評価制度では、セキュリティ対策の成熟度に応じて2つの評価レベルが設けられています。企業は自社の状況と取引先の要求に応じて取得を目指すレベルを選択します。

評価レベル比較表

項目 ★3(基本) ★4(標準)
要求事項数 26項目 56項目
評価基準数 83基準 157基準
認定有効期限 1年 3年
対象企業像 中小企業・サプライチェーン参加企業 中堅〜大企業・重要インフラ関連企業
MFA要件 多要素認証(TOTP・SMS OTP等) フィッシング耐性MFA(FIDO2推奨)
取引先管理 基本的な管理 定期的なセキュリティ評価(年1回以上)
難易度 比較的取得しやすい 相応の体制整備が必要

★3(基本)の概要

★3は、サプライチェーンに参加するすべての企業が最初に目指すべき基本的なセキュリティ水準です。26の要求事項と83の評価基準で構成され、認定有効期限は1年です。経営体制の整備、資産管理、ID管理、多要素認証の導入、取引先管理の基礎、ログ管理、インシデント対応計画、セキュリティ教育といった分野をカバーします。

中小企業でも1〜2年の取り組みで十分に取得可能な水準に設計されており、専門的なセキュリティ人材がいない企業でも、外部の支援を活用しながら対応できます。

★4(標準)の概要

★4は、★3の要求事項に加え、より高度なセキュリティ対策を求める水準です。56の要求事項と157の評価基準で構成され、認定有効期限は3年です。フィッシング耐性MFA(FIDO2/パスキー推奨)、PAM(特権アクセス管理)、IDライフサイクル管理、委託先の定期的なセキュリティ評価、セキュリティ監視体制の整備、フィッシング訓練の実施などが求められます。

★4は政府調達や重要インフラ分野の取引で求められる可能性が高く、中堅〜大企業が取得を目指す水準として位置づけられています。

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4. 対象企業・適用範囲

SCS評価制度は、業種・規模を問わずサプライチェーンに関わるすべての企業が対象です。ただし、特に以下のような企業・組織において取得の重要性が高いと考えられます。

★3取得が特に重要な企業

  • 大手メーカー・商社のサプライヤー(部品・材料・サービスの提供企業)
  • システム開発・ITサービスの委託先企業
  • 物流・倉庫・輸送業者
  • 会計・法務・人事等の業務委託先
  • 政府・地方自治体の調達に関わる中小企業

★4取得が特に重要な企業

  • 電力・ガス・水道・通信等の重要インフラ事業者およびそのサプライヤー
  • 防衛省・安全保障関連の調達に参加する企業
  • 金融機関およびその委託先システム会社
  • 医療機器・製薬メーカーおよびその委託先
  • 政府調達への参加を目指す企業
  • 海外企業との取引でCMMC等の国際基準適合を求められる企業

業種別に見ると、製造業・情報通信業・金融業・医療福祉業・公共サービス業が主要な対象となりますが、ECサイト運営・人材派遣・コンサルティング等のサービス業においても、取引先からの要求として★3取得を求められるケースが増える可能性があります。

企業規模別の対応方針

  • 大企業(従業員300名以上):★4を目指しつつ、取引先・グループ会社への★3取得要求を検討
  • 中堅企業(従業員50〜299名):まず★3を取得し、段階的に★4へのステップアップを計画
  • 中小企業(従業員50名未満):★3取得を優先。専門家の支援を活用して効率的に対応

5. 制度開始スケジュールと参加形態(任意制度)

SCS評価制度は2026年3月27日に制度構築方針が公表され、2026年度末ごろの制度開始を目指して整備が進められています(METI発表)。

経済産業省・内閣官房からの注意喚起(2026年4月27日)
SCS評価制度を引き合いにした「評価を取得していないと商取引が規制される」「今すぐ取得しないと入札から除外される」といった営業活動が報告されています。本制度は任意の制度であり、商取引に規制措置を講じるものではありません。正しい情報はIPAまたは経済産業省の公式発表にてご確認ください。

制度スケジュールの概要

時期 主な内容
2026年3月27日 経済産業省が制度構築方針を公式発表
2026年4月21日 IPA公式サイト公開
2026年秋頃(予定) 評価ガイド(要求事項・実装例)公表予定(IPA発表)
2026年度末ごろ(予定) 制度正式開始(METI発表)
制度開始後 企業の任意参加での評価申請受付開始

任意制度としての位置づけ

SCS評価制度は任意参加の制度です。企業に対して取得を強制する法的義務は設けられておらず、本制度は個社間の商取引に規制措置を講じるものではありません(経済産業省・内閣官房 2026年4月27日)。

本制度の仕組みは、2社間の取引契約等において発注者が受注者に適切なセキュリティ対策の段階(★)を提示し、受注者に示された対策の実施を促すとともに、両者で実施状況を確認するものです。取引先から★取得を求められた場合は、その契約関係に基づいて対応を検討することが実務上の出発点となります。

また、本制度の評価基準を達成するにあたっては、特定のセキュリティ対策製品の導入が必須とされているものではありません(経済産業省・内閣官房 2026年4月27日)。詳細な評価基準は2026年秋頃に評価ガイドとして公表予定です。最新情報はIPA公式ページをご確認ください。

6. 取得メリット(ビジネス・セキュリティ・競争優位)

SCS評価制度の取得は、単なるセキュリティ対策の証明にとどまらず、ビジネス上の多くのメリットをもたらします。

ビジネス上のメリット

  • 取引機会の拡大:政府調達や重要インフラ関連企業との取引において、SCS評価取得が重要なアドバンテージになります。
  • 既存取引先との関係強化:大手取引先がサプライヤーのセキュリティ評価を強化する中、SCS評価取得は取引継続・拡大の条件を満たすことにつながります。
  • 入札・RFP対応:セキュリティ対策の水準を客観的に示せる認定証として、入札書類や提案書に活用できます。
  • 保険・金融面での優遇:サイバー保険の保険料引き下げや、金融機関からの融資審査での有利な扱いが期待されます(各金融機関・保険会社の方針による)。

セキュリティ上のメリット

  • インシデントリスクの低減:要求事項を充足することで、サイバー攻撃の侵入・被害拡大リスクを体系的に低減できます。
  • セキュリティ対策の可視化:自社のセキュリティ対策の現状をギャップ分析によって把握し、優先的に対処すべき課題を明確にできます。
  • インシデント対応能力の向上:インシデント対応計画の整備・訓練が要件として含まれるため、実際のインシデント発生時の対応力が向上します。

競争優位性の確保

  • 差別化要素:制度開始から早期に取得することで、競合他社に対する差別化要素となります。
  • 顧客・パートナーへの信頼性訴求:認定取得を通じて、顧客・パートナー企業に対して客観的なセキュリティ水準を示せます。
  • 社内セキュリティ意識向上:制度対応の過程でセキュリティ教育・訓練が実施されるため、組織全体のセキュリティ意識が向上します。

7. 国際フレームワーク(CMMC・TISAX)との関係

SCS評価制度は日本独自の制度ですが、その設計思想は米国・欧州の先行する国際的なサプライチェーンセキュリティフレームワークと多くの共通点を持っています。

CMMC(米国防省サイバーセキュリティ成熟度モデル認証)との比較

CMMC(Cybersecurity Maturity Model Certification)は米国防省が主導するサプライチェーンセキュリティ認証制度で、米国防省との契約企業すべてに適用されます。CMMC 2.0ではLevel 1(基本17要件)・Level 2(110要件、NIST SP 800-171準拠)・Level 3(高度な要件)の3段階が設けられており、SCS評価制度の★3/★4の2段階構造と類似したアプローチが取られています。

日本企業で米軍・防衛関連の調達に参加している場合、CMMCとSCS評価制度の両方への対応が求められる可能性があります。詳細な比較については、別記事「SCS評価制度とCMMCの比較」をご参照ください。

TISAX(自動車業界向けセキュリティ評価)との関係

TISAX(Trusted Information Security Assessment Exchange)は欧州自動車工業会(VDA)が主導する自動車サプライチェーン向けの情報セキュリティ評価制度です。欧州系自動車メーカーとの取引がある日本の自動車部品メーカーにとっては、TISAXとSCS評価制度の両方への対応が求められるケースがあります。

SCS評価制度の要求事項の多くはISO/IEC 27001の概念と重なる部分があるため、ISO 27001を既に取得している企業は、その延長線上でSCS評価制度への対応を進めやすい環境にあります。ただし、具体的な要求事項の対応関係についてはIPA公式ドキュメントを参照してください。

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8. SCS評価取得のステップ概要

SCS評価制度の取得に向けた一般的なステップを以下に示します。制度の詳細な審査プロセスについては、正式な制度開始後にIPA公式ページでご確認ください。

STEP 1:現状把握(ギャップ分析)

まず自社の現状のセキュリティ対策水準と、SCS評価制度の要求事項とのギャップを把握します。★3の26要求事項・83評価基準、または★4の56要求事項・157評価基準に対して、自社の充足状況を一項目ずつ確認します。

STEP 2:対策計画の策定

ギャップ分析の結果を基に、対応が必要な項目の優先順位を付け、実施計画を策定します。投資対効果や実施難易度を考慮しながら、3ヶ月・6ヶ月・1年の段階的な計画を立てることが推奨されます。

STEP 3:対策の実施

計画に従い、セキュリティ対策を実施します。ID管理・アクセス管理の整備、MFAの導入、資産管理台帳の整備、インシデント対応計画の策定、セキュリティ教育の実施などが主な取り組みとなります。

STEP 4:評価申請

IPA(または指定評価機関)に評価を申請します。★3は比較的簡易な評価プロセス、★4はより詳細な審査が行われると想定されます。具体的な申請手続きについては、制度開始後にIPA公式ページでご確認ください。

STEP 5:認定取得・維持

評価に合格すると認定が付与されます。★3は1年、★4は3年の有効期限があり、有効期限内に更新評価を受ける必要があります。認定維持のために、日常的なセキュリティ管理活動を継続することが重要です。

認定維持のための日常的な管理活動

SCS評価制度の認定は取得がゴールではなく、継続的な管理活動が求められます。有効期限内に適切な管理を継続しなければ、更新評価で問題となる可能性があります。以下が認定維持に必要な日常的な管理活動の例です。

  • 月次:ログの確認・不審アクセスのチェック、セキュリティイベントのレビュー
  • 四半期:脆弱性情報の確認とパッチ適用状況の確認、アカウント権限のレビュー
  • 半年〜年次:セキュリティ教育の実施、インシデント対応計画の見直し、委託先管理の確認
  • 随時:退職・異動時のアカウント処理、新規システム・サービス導入時のセキュリティ評価

これらの活動を実施する際は、必ず記録(証跡)を残すことが重要です。「実施した」という証拠がなければ、更新評価で評価されません。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. SCS評価制度は義務ですか?取得しないと取引できなくなりますか?

SCS評価制度は任意参加の制度です。本制度は個社間の商取引に規制措置を講じるものではなく、「取得していないと商取引が規制される」「入札から除外される」といった事実はありません(経済産業省・内閣官房 2026年4月27日注意喚起)。ただし、取引先から★取得を求められた場合は、その契約関係に基づいて対応を検討することになります。制度の詳細・最新情報はIPA公式ページをご確認ください。

Q2. どのような企業が対象になりますか?

業種・規模を問わず、サプライチェーンに関わるすべての企業が対象となり得ます。特に製造業・IT業・金融業・医療業・公共サービス業のサプライヤー・委託先企業において重要性が高く、政府調達に参加する企業や重要インフラ事業者のサプライヤーは優先的な取得を検討することが推奨されます。

Q3. 評価取得にかかる費用はどのくらいですか?

評価取得費用(審査料等)については、制度開始後にIPAより正式に公表される予定です。現時点では公式な費用情報が公開されていないため、IPA公式ページをご確認ください。なお、評価取得費用とは別に、対策実施のための社内工数・ツール導入費用・外部支援費用が発生する場合があります。Net Peaceでは無料の事前診断サービスを提供していますので、お気軽にご相談ください

Q4. ISO 27001を取得していれば、SCS評価制度への対応は楽になりますか?

ISO/IEC 27001は情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であり、SCS評価制度の要求事項と重なる概念が多く含まれています。ISO 27001を既に取得・維持している企業は、セキュリティ管理体制の基盤が整っているため、SCS評価制度への対応を進めやすい状況にあります。ただし、SCS評価制度には日本のサプライチェーン環境に特有の要件が含まれる場合があるため、具体的な対応状況はIPA公式ドキュメントで確認することを推奨します。

Q5. ★3と★4のどちらを取得すれば良いですか?

取得目標は、自社の取引先・顧客の要求や業種・規模によって異なります。一般的な方針として、まず★3取得を目指し、その後★4へのステップアップを計画することが推奨されます。ただし、政府調達や重要インフラ分野への参入を目指す企業、または大手取引先から高いセキュリティ水準を求められている企業は、最初から★4を目標に設定することを検討すべきです。

Q6. SCS評価制度の取得にはどのくらいの期間がかかりますか?

取得期間は自社の現状のセキュリティ対策水準によって大きく異なります。既にある程度の対策が整っている企業では3〜6ヶ月程度、対策が十分でない企業では1〜2年程度かかる場合があります。★3の26要求事項・83評価基準と現状のギャップを分析した上で、現実的な計画を立てることが重要です。Net Peaceでは無料のギャップ分析サービスを提供していますので、ご相談ください

SCS評価制度と他のセキュリティ基準の位置づけ整理

自社がすでにISO 27001やプライバシーマークを取得している場合でも、SCS評価制度への対応は別途必要となります。各基準は評価の観点が異なるため、以下の整理を参考にしてください。

基準・制度 主な目的 SCS★3との関係 SCS★4との関係
ISO/IEC 27001 情報セキュリティマネジメント全般 重複多く対応しやすい 重複多いが追加対応が必要
プライバシーマーク(Pマーク) 個人情報保護 一部重複(教育・管理体制) 一部重複(教育・管理体制)
CMMC(米国) 米国防省サプライチェーン 概念的に近い(Level 1相当) 概念的に近い(Level 2相当)
TISAX(欧州自動車) 自動車サプライチェーン情報セキュリティ 一部重複 一部重複
NIST CSF サイバーセキュリティフレームワーク全般 参考フレームワーク 参考フレームワーク

各制度の具体的な要件マッピングについては、IPA公式ドキュメントをご参照ください。

SCS評価制度対応で陥りやすい失敗パターンと対策

SCS評価制度への対応を進めるうえで、実務経験から見えてきた陥りやすい失敗パターンをご紹介します。

  • 失敗1:「後で対応しよう」と先送りし、取引先からの要求に間に合わない
    対策対応には最低6ヶ月〜1年の準備期間が必要です。取引先からの要求が実際に来てからでは間に合わないことが多いため、今から準備を開始することが重要です。
  • 失敗2:IT部門だけの取り組みになり、経営者の関与が薄い
    SCS評価制度は経営体制・ガバナンスを評価する要件を含むため、経営者が関与しないと審査で問題になります。情報セキュリティ方針は経営者の承認が必要であり、セキュリティを「経営課題」として位置づける必要があります。
  • 失敗3:ツールを導入したが「証跡が残っていない」
    セキュリティ対策ツールを導入しても、実際の運用・監視・確認の記録(証跡)がなければ審査で評価されません。対策の実施とともに、証跡ドキュメント(ログ・記録・議事録等)の整備を並行して行うことが重要です。
  • 失敗4:退職者アカウントの管理漏れ
    ID管理の最もよく見られる問題が、退職・異動した従業員のアカウントが有効なまま残存しているケースです。人事部門との連携ルールを早期に整備し、確実な無効化・削除を徹底する必要があります。
  • 失敗5:委託先管理を「契約書があれば十分」と誤解する
    契約書でのセキュリティ要件の明示は必要条件ですが、それだけでは不十分です。特に★4では実際の評価・確認の実施と記録が求められます。

SCS評価制度対応に活用できる無料リソース

SCS評価制度への対応を進めるうえで活用できる公的な無料リソースを紹介します。

  • IPA公式ページ:https://www.ipa.go.jp/security/scs/index.html — 制度の公式情報・ドキュメント・申請情報が掲載されます。
  • 経済産業省発表資料:制度構築方針(2026年3月27日発表) — 制度設計の背景・方針が確認できます。
  • JPCERT/CCのセキュリティ情報:https://www.jpcert.or.jp/ — サプライチェーン攻撃に関する注意喚起・対策情報が随時公開されています。
  • IPA「情報セキュリティ10大脅威」:毎年発行される脅威ランキングと対策ガイドで、セキュリティ教育の教材として活用できます。
  • NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)資料:政府機関・重要インフラ向けのセキュリティガイドラインが公開されています。

今すぐできる第一歩

  • ステップ1:IPA公式ページ(https://www.ipa.go.jp/security/scs/index.html)でSCS評価制度の最新情報を確認する。
  • ステップ2:自社の現状セキュリティ対策を棚卸しし、★3の26要求事項・83評価基準とのギャップを大まかに把握する。
  • ステップ3:経営者にSCS評価制度の重要性を報告し、対応の優先順位と予算の確保を相談する。
  • ステップ4:外部の専門家(Net Peace等)に無料相談し、具体的な対応計画を立てる。

10. まとめ

SCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)は、経済産業省主導・IPA運用のもと、2026年度末ごろの制度開始を目指して整備が進んでいます。サプライチェーン攻撃の急増という背景のもと、サプライチェーン全体のセキュリティ水準を底上げするための制度として、日本のサイバーセキュリティ政策において重要な位置づけを持ちます。

制度の主なポイントをまとめると:

  • ★3(基本):26要求事項・83評価基準・有効期限1年。中小企業が最初に目指すべき水準。
  • ★4(標準):56要求事項・157評価基準・有効期限3年。政府調達・重要インフラ分野で必要性が高い水準。
  • 現時点では任意参加だが、政府調達・重要インフラ取引での実質的な必須化の可能性あり。
  • 制度開始スケジュール・詳細はIPA公式ページで随時確認。

SCS評価制度への対応は、単なるコンプライアンス対応にとどまらず、自社のサイバーセキュリティリスクを低減し、ビジネスの信頼性・競争力を高める機会でもあります。今から準備を進めることで、制度開始後の早期取得とビジネス上のアドバンテージ獲得が可能です。

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