1. 結論:共用アカウントは原則避けるべき
「共用アカウント(複数人で1つのIDを使い回すこと)は、禁止すべきなのか」——多くの組織が悩む問題です。結論からお答えします。
原則として、共用アカウントは避けるべきです。共用アカウントは、セキュリティ上いくつもの深刻なリスクを抱えており、監査や各種のセキュリティ基準でも、個人を識別できることが求められます。ただし、「禁止」という言葉だけで片づけられないのが、この問題の難しいところです。現場によっては、端末の共用がどうしても避けられない事情があるからです。大切なのは、頭ごなしに禁止するのではなく、共用アカウントのリスクを、現場を止めずに解消する方法を見つけることです。順に見ていきましょう。
2. 共用アカウントの3つのリスク
なぜ共用アカウントを避けるべきなのか。主なリスクは3つあります。
- 誰が操作したか分からない(追跡不能):全員が同じIDを使うため、トラブルや不正が起きても、誰の行為か特定できない。原因究明ができず、抑止力も働かない。監査にも対応できない。
- パスワードが変わらない:多人数が同じパスワードを知っているため、変更が難しく、何年も固定されがち。付箋に書かれることも。退職者もパスワードを知ったまま。
- 退職者・異動者がアクセスできる:共用アカウントのパスワードは、辞めた人・異動した人も知っている。彼らが不正にアクセスしても、気づけない。
これらのリスクの根っこにあるのは、「個人が識別されていない」という一点です。誰が使っているか分からないからこそ、追跡もできず、パスワードも変えられず、退職者のアクセスも断てません。だからこそ、共用アカウントは避けるべきなのです。とりわけ、機密情報を扱う場面や、監査・取引先の要求に応える必要がある場面では、共用アカウントは明確な弱点になります。
3. 現実には「共用が避けられない」現場もある
共用アカウントは避けるべき——それは分かっていても、現実には簡単に廃止できない現場があります。
- 製造現場・工場:1台の端末を、交代勤務の作業員が入れ替わり使う。手袋のままの操作、素早い交代が求められる。
- 医療現場:ナースステーションや診察室の端末を、多職種のスタッフが共有する。救急など迅速さが必要な場面も。
- 店舗・受付:複数のスタッフが、同じレジや受付端末を使う。
こうした現場で、「1人1台のPCに、各自が複雑なパスワードでログインする」という一般的なやり方を強制すると、現場は回りません。交代のたびにログインし直す手間、パスワード入力の煩わしさ——これらが作業を妨げます。結果、現場は「ログインしっぱなし」「付箋にパスワード」といった抜け道で対応し、かえってセキュリティが悪化します。「共用アカウントを禁止する」というルールだけを押し付けても、現場の事情を無視すれば機能しないのです。では、どうすればよいのでしょうか。
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4. 答え——端末は共用でも、ログインは個人
共用アカウント問題の答えは、「端末の共用」と「アカウントの共有」を分けて考えることにあります。問題なのは、後者——1つのアカウントを共有することです。端末を共用すること自体は、避けられないなら仕方ありません。大切なのは、「端末は共用でも、ログインは個人ごとにする」ことです。
1台の共用端末を、作業者それぞれが「自分のID」でログインして使えるようにすれば、共用アカウントの3つのリスクは一気に解消します。誰が操作したかが記録され、パスワード使い回しの問題が消え、退職者のアクセスも確実に断てます。
課題は「どうやって、現場の負担なく個人ログインを実現するか」でした。ここで有効なのが、パスワードに頼らない、素早い個人認証(パスワードレス)です。ICカード(社員証)をかざす、指や顔で認証する——こうした手段なら、手袋のままでも、パスワードを覚えることなく、数秒で個人としてログインできます。交代のたびの手間も最小限です。共用アカウント時代とほとんど変わらない使い勝手で、「誰が操作したか」だけが記録される——これが、共用アカウント問題の理想的な解決です。「禁止」を押し付けるのではなく、現場が自然に使える形で、いつのまにか個人認証になっている。パスワードレスは、それを可能にします。
5. まとめ
「共用アカウントは禁止すべきか」という質問への答えは、「原則として避けるべき」です。誰が操作したか追跡できず、パスワードが変わらず、退職者もアクセスできる——共用アカウントは、これらの深刻なリスクを抱えているからです。しかし、単に「禁止」と押し付けるだけでは、共用が避けられない現場では機能しません。
答えは、「端末は共用でも、ログインは個人ごとにする」こと。そして、それを現場の負担なく実現する鍵が、パスワードに頼らない素早い個人認証(パスワードレス)です。ICカードや生体認証で数秒でログインでき、誰が操作したかが確実に記録される——これなら、現場を止めずに、共用アカウントのリスクを解消できます。自社に残る共用アカウントを、「禁止」ではなく「現場に優しい個人認証への置き換え」で解消していくことをおすすめします。失われた「誰が」を取り戻すことが、セキュリティ統制の第一歩です。