本記事の情報について(最終確認日:2026年8月)
本記事は、警察庁・金融庁等が公表している犯罪収益移転防止法(犯収法)改正に関する情報を基に作成しています。施行時期・対象方式・経過措置などの詳細は今後変更・詳細化される可能性があるため、最新かつ正式な内容は警察庁・金融庁の公式発表および改正政省令の条文で必ずご確認ください。
オンラインの本人確認(eKYC)が、2027年に向けて大きく変わろうとしています。犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正により、2027年4月の施行が予定されており、これまで広く使われてきた「本人確認書類の画像を撮影・送信する方式(いわゆる券面撮影方式/従来のホ方式)」が原則廃止され、公的個人認証(JPKI)を中心とした方式へ一本化される見通しです。本記事では、何が・なぜ変わるのか、事業者は何を準備すべきかを整理します。
何が変わるのか
改正の柱は大きく2つです。
- 非対面(オンライン):本人確認書類の券面(写真付き書類の画像)を撮影・送信する方式を原則廃止し、マイナンバーカードのICチップを読み取る公的個人認証(JPKI)へ一本化する方向。
- 対面:本人確認書類の目視ではなく、ICチップの読み取りによる確認を求める方向で厳格化。
なお、一部の見直しは2025年にも段階的に施行されており、2027年4月に向けて全体像が確定していく流れです。呼称(○方式)は改正に伴う条項の再編で整理されるため、最終的な区分は改正後の条文でご確認ください。
なぜ厳格化されるのか
背景にあるのは、券面画像を用いたなりすまし・偽造書類による不正な口座開設や本人確認のすり抜けの深刻化です。画像は加工・偽造が可能で、送信された画像が本物かをオンラインで完全に見抜くことは容易ではありません。一方、マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書を用いるJPKIは、公的機関が発行した証明書を暗号技術で検証するため、券面撮影より確実性が高いとされます。「見た目の確認」から「暗号による検証」へ移行する、というのが今回の本質です。
廃止される方式・残る方式(概要)
| 区分 | 従来 | 改正後(予定) |
|---|---|---|
| 非対面 | 券面画像+容貌画像の送信 など | 公的個人認証(JPKI/ICチップ読み取り)へ一本化の方向 |
| 対面 | 本人確認書類の目視 など | ICチップ読み取りによる確認を求める方向 |
| 代替手段 | ― | マイナンバーカード非保有者向けに、書類原本の郵送等の方法が引き続き認められる見込み |
※ 上表は方向性の要約です。正式な方式区分・要件・経過措置は改正政省令および警察庁・金融庁の公式資料でご確認ください。
マイナンバーカードを持っていない人への対応
JPKI一本化で懸念されるのが、マイナンバーカード未保有者の扱いです。現時点では、カードを持たない利用者に対しては本人確認書類の原本を郵送するなど、代替的な方法が引き続き認められる見込みです。ただし利用者の利便性は下がるため、事業者側はカード読み取りを前提としたスムーズな導線と、非保有者向けの代替フローの両方を用意する必要があります。
事業者が今から準備すべきこと
- 現行方式の棚卸し:自社のeKYCが券面撮影方式に依存していないかを確認する。
- JPKI対応への移行計画:スマートフォンのNFCによるICチップ読み取りに対応したeKYC基盤へ切り替える。
- 非保有者フローの整備:郵送等の代替手段を業務フローに組み込む。
- UX設計:読み取り手順のわかりやすさが離脱率を左右するため、案内・エラー処理を丁寧に設計する。
- スケジュール逆算:2027年4月施行に間に合うよう、システム改修・検証期間を確保する。
まとめ
2027年の犯収法改正は、eKYCを「画像による確認」から「公的個人認証による検証」へと転換させる大きな節目です。券面撮影方式に依存している事業者は、早めにJPKI対応への移行と非保有者向け代替フローの整備を進める必要があります。制度改正は本人確認の信頼性を底上げする一方、対応の遅れは事業リスクにも直結します。確実な本人確認の仕組みを、余裕をもって整えておくことが重要です。